海事振興連盟主催の兼原敦子先生の講演を聴講し、考えた。1年半前に紅海でイエメンのフーシ派の襲撃で、乗っ取られた日本郵船の船員が解放された。シリアのアサド政権崩壊で、後ろ盾を失ったことが原因か。
1/23に紅海に面するイエメンのフーシ派は、1年半ぶりに日本郵船の船員を解放したとの報道。
① シリアのアサド政権の崩壊で、フーシ派はヒズボラという後ろ盾を失った。
② シリアのアサド政権の崩壊は、ロシアという後ろ盾を失ったことだ。プーチンロシアはウクライナ侵略に軍事力を注力したので、アサド政権を支えきれなかったのだろう。
③ さらにイスラエルはヒズボラを、ハマスを支援するテロ組織として幹部を中心に徹底して攻撃した。
以上の図式から、日本郵船の船員の人質解放は、ロシアの軍事力弱体化とイスラエルのヒズボラ攻撃に寄ってもたらされたと言えるか。
ところで昨日、海事振興連盟・海洋立国懇話会の勉強会が開催され、著名な国際法学者の兼原敦子先生が「紅海におけるフーシ派による日本関係船舶に対する攻撃:『海洋利用を保護する権利』試論」を約1時間に渡って講演された。
兼原先生の講演は、海洋法条約に基づく法秩序をどう構築するか?という観点から以下のとおり精緻なものでした。
2023年11月19日に日本郵船運用のGalaxy Leader号がイエメンを拠点とするフーシ派のヘリコプターによる襲撃事件で乗っ取られ、船員25名が人質になったことを例に、日本はどう対処すべきかという論旨でした。
国連決議の解釈について
① アメリカとUKは自衛権の行使を根拠として位置づけ、イエメン国内のフーシ派基地を攻撃した。
② ロシアと中国は自衛権を否定した。
③ スイスは国連決議のいう「権利」は、商船・軍艦への攻撃を撃退するための軍事的措置に厳格に限定されるし、船や人員・乗員を保護するための措置であると主張した。
日本の立場はスイスの立場に近い、と解説された。
海洋法と国際法をベースにした高度な問題提起に感銘しました。同時に、国際法とは国同士の主権と利害がぶつかり合う分野ですが、その中にあって法の支配を確立しようと努力されている姿勢が強く印象に残りました。