本日午前10時30分から、東京地方裁判所で第1回口頭弁論が開かれました。私は冒頭、原告を代表して次のように陳述しました。
私は、原告の土屋正忠と申します。今回の訴訟の詳細は訴状にまとめておりますので、我々が、なぜこのような訴えを起こしたのかという動機を申し上げます。
私は武蔵野市職員9年、市議8年、市長22年、衆議院議員通算8年6ヶ月、地方行政及び国政のうち、主として地方自治を所管とする総務省及び衆議院の総務、財務金融、法務の各委員会に所属して、公務一筋で過ごしてまいりました。今回の訴訟を提起しましたのは、生涯かけた公務の中で今回の土地の売却は看過することができない重要な問題だと考えたからです。
第一に吉祥寺駅1分の自転車駐輪場を売却して、駅から3分の土地を購入し、同じ自転車駐輪場をつくる。この結果、駐輪台数は100台以上減少する。さらに、用途地域が商業地で容積率600%から近隣商業地300%に価値が下がる。市は二度と手に入らない貴重な財産を失い、市民は不便になる。誰が考えても公益性があるとは考えられません。むしろ減少します。不合理、不自然、不可解な取引であり、隣地所有者に売却することが目的だったのではと懸念を持つ取引であります。
第二は、この土地取引が都市計画法や市街地再開発法など、土地収用法が適用される公共事業に必要な場面ではないにもかかわらず、、市長とレーサムとの契約に基づいて行われたことであります。公人たる市長が、公法によって与えられた権限を行使する場面ではないにもかかわらず、契約で市有地を売却する、こんなことが許されるのとすれば、市民の税金で取得した市有地が理由をつけて、次々と売却されることになります。権限の踰越、濫用であります。
第三に、代替地の定義の誤用であります。被告はA用地を取得するため、B用地を代替地として売却したと主張しておりますが、代替地の定義が間違っています。憲法第29条第1項で財産権の不可侵が規定され、第2項で公共の福祉に適合するよう法律で定めるとしています。第3項で公共事業により私有財産を制限する場合は、正当な補償が必要と規定しています。この場合、土地収用法の適用があります。代替地は憲法第29条の第3項で公共事業により私有財産を制限した場合、基本は金銭補償ですが、それを補完して事業を促進するための手段として代替地を用意する。これが法理ではないでしょうか。今回は任意の契約による売買で㈱レーサムの土地は公法による権利の制限は受けず代替地ではありません。
第四は、市有地売却について具体的に検討が始まってから一年余りの間、市報に1回も「売却」が記述されることなく、市民に知らされずに隠密裏に進められたことであります。市民参加を定めた武蔵野市自治基本条例違反であり、デュープロセスに決定的に欠けていることであります。
第五に、市長が市に与えた損害についてであります。詳細は訴状に委ね、ますが、市の売却した正常価格坪524万円は、世間の相場から著しく安価であり、常識を欠きます。令和4年9月21日、東京都が公表した国土利用計画法の基準地価で当該土地に近接する吉祥寺本町1-9-12の評価は坪2349万円(令和3年2260万円)であります。本件の当該土地は基準値から約100m東に位置している超一等地であります。この基準地評価の四分の一以下などという正常価格は、実勢価格として絶対にあり得ないことであります。
これら一連の大筋をたどると、最初から市の駐輪場を隣地所有者に安く売るためではなかったかと感じます。司法の場において、本件の違法、不当な取引と損害が明らかになることを求めます。