松下市長の誤答弁
市議会議員が昨年12月に廃案になった住民投票条例について、再度提出するかを質問しました。「外国人が武蔵野市に住民登録して3カ月経過すれば住民投票権を与えるという武蔵野市住民投票条例は、最高裁や名古屋高裁の判決に違反しているのではありませんか」と。住民投票権を与えるのは、日本人と外国人と同じ条件で良いのかという質問でした。
外国人の住民投票権については、平成14年に名古屋高等裁判所で判決がありました。岐阜県御嵩町で産業廃棄物処理施設の設置について町民の意思を問う住民投票条例が制定されました。その条例の投票資格者は日本国民のみを対象としていて、外国人は含まれていませんでした。そこで韓国籍の町民が「我々も住民なので除外したのは憲法第93条に違反している。精神的苦痛を被った」として、町長相手に損害賠償請求の訴えを起こしました。岐阜地方裁判所は条例は合憲と認定。住民は不服として名古屋高裁に控訴しました。名古屋高裁も合憲の判決を下したのです。最高裁も棄却。
この判決のもとになったのは、平成7年の次のような最高裁判決でした。
- 憲法93条で規定する住民とは日本国民である
- しかし、憲法92条以下の地方自治の本旨に照らして、外国人でも“特別永住者等その居住する区域の地方公共団体と特段に緊密な関係を持つに至ったと認められる者について選挙権を与えることまで・・・憲法上禁止されているとはまでは考えられない”
- 上記外国籍住民に選挙権を与えるか否かは立法政策(法律をつくる必要)の問題である
と判示したのです。わかりやすく言うと
憲法の住民とは日本国民をさしますが、戦前から日本で生活をしている特別永住者等は地域社会と関係が深いので、その方たちに選挙権を与えても憲法違反にはなりません。この場合でも法律が必要です。と判断したのです。
名古屋高裁は選挙権だけでなく住民投票でもこの判決を引用し、外国人に住民投票権を与えるかは、立法政策の問題と判示したのです。
武蔵野市の住民投票条例の規定は、日本人と同様、住民登録してわずか3カ月の外国人にも住民投票権を認めているのですから、名古屋高裁の判決「特別永住者等」と明らかに要件が異なります。
松下市長は「名古屋高裁の判決は「特別永住者等」に対する判断だから、武蔵野市の条例とは異なる」と答弁したのです。
憲法の解釈についての最高裁判決なのですから、正しい理解の下に公人として行政を進めてください。