この数か月の二人の討論を通じて、一番関心が集まったのは新型コロナウィルスだ。バイデン氏は対策が遅れたことを指摘すると共に公的医療保険について言及した。
不法移民に対しては、トランプ大統領はメキシコに壁を造ったが、バイデン氏は人道的に配慮という主張だった。
トランプ大統領はアメリカンファーストで中国を念頭に中国製品締め出しの保護関税をかけたが、日本がリードしてTPP(環太平洋自由貿易協定)が発効すると、トランプ大統領は米国が不利と見て日米で新貿易協定を締結した。TPPと同じ内容の協定を四か月でまとめた。オーストラリア産牛肉が低い関税で日本に入れば、米国産牛肉が売れなくなるという思惑だ。
米軍再編に絡んで日本や韓国に駐留経費の負担増を求めると共に、NATOの加盟国の独仏などにGDPに占める軍事費を2%に引き上げるように迫ったが、民主党もオバマ政権当時から世界の警官をやめると主張していた。
中国制裁は特に知的財産分野でトランプ大統領は明解な態度を打ち出した。中国からの10万人の留学生が、各大学や研究機関で高度な特許技術などを無断で中国に流出させている。この点は、連邦議会では民主党も同様の見解があるという。
結局、トランプ大統領が追い込まれたのは新型コロナウィルス対策で見せた非科学的なマッチョな振る舞いだろう。コロナに負けるなと逞しい力強い男を演じたが、それに辟易した女性票が大量に反トランプになった。
大きな流れでみると、アメリカ建国の担い手のWASP(ホワイト・アングロサクソン・プロテスタント)を中心にした白人主義が、ヒスパニックや黒人・アジア系米国人など様々な多民族国家に移行していく過程なのだろう。全国民の中の白人の占める割合が、近い将来50%を切り、相対的に少数派になるという見通しもある。ダイナミックな多民族国家のアメリカ。星条旗の下で団結するのか分断か?
アメリカの大統領選挙に学ぶことは、混乱があっても自由に発言・活動出来る国がよいか、国家が思想・信条や移動の自由まで監視し統制する中国のようなモデルがよいのかという選択に行きつくだろう。