本日の衆議院本会議でテロ等準備罪処罰法案に関して自民党を代表して政府に質問した。
2003年国会で承認されながら締結できていない「国際的な組織犯罪の防止に関する国際連合条約」(TOC条約)締結の必要性を改めて安倍総理に尋ねた。
続いて、岸田大臣、金田法務大臣、麻生財務金融大臣に質問。
国民の身体や生命財産を守る立法措置を取ることが国民の負託に応える道だ。十分な国会議論を重ねて、立法府としての責任を果たそう。
<衆議院本会議場にて>
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自由民主党の土屋正忠です。ただいま上程されました「組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律等の一部を改正する法律案」、いわゆる「テロ等準備罪処罰法案」について、自由民主党・無所属の会を代表して質問いたします。
今年は日本国憲法施行70周年の記念すべき年にあたります。我が国は先人達の血の滲むような努力の末、今日の平和で成熟した民主主義社会を実現することができました。
振り返りますと、サンフランシスコ平和条約の締結と独立、米ソ冷戦、60年日米安保の改定、1964年東京オリンピック、石油ショックと狂乱物価など幾多の困難や歴史の転換点に遭遇致しました。
とりわけ1989年ベルリンの壁崩壊から始まった1991年ソビエト連邦の解体の衝撃は戦後史を一変させる出来事でした。冷戦が終焉して、自由と民主主義、基本的人権の尊重、法の支配など、人類共通の価値に基づく平和な世界が出現するとの予感がありました。
しかし現実はまったく様相が異なった世界でした。
民族、宗教、人種、貧困、独裁、薬物汚染などの紛争が続出し、またこの10数年ICTの飛躍的進歩と共に深刻化するサイバー攻撃など、世界を揺るがす困難が相次いで噴出するとともに、2001年9月の米国同時多発テロから最近ではアル・カーイダやISILのような組織的テロリズムが猖獗を極めております。
昨年7月のバングラデシュにおける7名もの邦人が犠牲になったテロ事件も記憶に新しいところですが、直近の4月3日にロシア・サンクトペテルブルグの地下鉄において市民を標的にした多数の死傷者を出す卑劣な爆発事件が発生しております。
これらの現実に直面して国際社会は、各国が協力して、テロや国際金融犯罪と戦うことを決意し、2000年に「国際的な組織犯罪の防止に関する国際連合条約」、いわゆるTOC条約を採択し、既に187の国・地域が締結しました。
我が国においても、2003年にその締結につき国会で承認されていますが、残念ながら未だ締結できておりません。
大規模なテロ事件等の発生が続いているなかで、我が国が国際社会において、テロを含む国際的な組織犯罪防止の抜け穴になっているような現状は早急に 解決しなければなりません。
このような現状に加え、2020年にテロの標的となり得る東京オリンピック・パラリンピック、その前年のラグビーワールドカップの開催を控えており、組織的なテロ事件の発生を未然に防止すべく万全の体制を整える必要があります。我が国がこの条約を締結する必要性について、改めて安倍総理に伺います。
次に、条約締結における国内法の整備について質問します。我が国がTOC条約を締結できていない理由は国内法が未整備のためであり、本法律案は条約を締結するために必要な法整備を行うものであると理解しております。そのなかで、過去の国会の議論を通じて、テロ等準備罪を新設しなくても条約を締結することは可能であるという主張が示されております。
しかし、2006年当時の民主党は「すでに締結した国際条約に基づいて、テロ組織や組織的犯罪集団に厳罰を設けること自体については当然であると考え、これを容認しております。」などとしたうえ、適用対象となる団体を「組織的犯罪集団」に限定するなどした「組織的な犯罪の共謀罪」の修正案を国会に提出されました。当時からTOC条約を締結するためには「重大な犯罪の合意罪」の法整備が必要であるとの認識に立っていたことは、真に卓見であります。今回のテロ等準備罪等の新設がなければTOC条約の締結ができないものと理解しておりますが、岸田外務大臣にお尋ねします。
続きまして、本法律案をめぐる国民の懸念と、国際犯罪、テロ事件防止への有益性について質問します。
このTOC条約を締結するための国内担保法案は、過去3度、国会に提出されましたが、いずれも廃案となりました。
廃案となった過去の法律案には、組織的な犯罪の共謀罪の新設が盛り込まれておりましたが、これに対して「正当な活動を行う団体も対象となる」や「内心が処罰されることになる」などといった懸念が示されておりました。今回政府が提出したテロ等準備罪処罰法案と、過去の法案との違いについて説明を金田法務大臣にお聞きします。
テロ等準備罪については、正当な活動を行っている団体も処罰の対象になるのかとの意見がありますが、その適用の対象となる団体を組織的犯罪集団に明文で限定しており、正当な活動を行っている一般の団体がこれに当たらないことは明白であります。我が国が監視社会になるなどという批判は全く誤解に基づく意見と考えますが、この点についての金田法務大臣の見解を伺います。
また、この条約を締結すれば日本国と条約締約国との間で、司法・治安の中央当局がテロ犯罪情報の交換をはじめとした相互援助ができ、迅速性に富んだ成果が得られると理解しております。TOC条約を締結することが、各締結国との連携強化にどのように資するか岸田外務大臣にお尋ねします。
更に、G7・先進七カ国等のもと政府間会合として設立された金融活動作業部会FATFにおいて、我が国を含めたTOC条約未締結国に対して国際金融取引上の懸念が表明されており、経済界からも一日も早い条約の締結を望んでいると理解しております。TOC条約を締結することによる影響について麻生財務・金融担当大臣にお尋ねします。
結びに、自由民主党は自由と民主主義を党是としている政党であります。三権分立のもと、法の支配、基本的人権の保障を最大の価値として尊重してまいりました。「内心の自由」「思想信条の自由」「結社の自由」「人身の自由」を擁護することは当然の責務であります。
同時に、これら基本的人権の最大の脅威は、暴力をもって一切を破壊しようとする、テロリズムではないでしょうか。国権の最高機関である立法府に身を置く者として、テロ防止のために隙間ない立法措置をとることは当然の責任であり、国民の負託に応える道だと確信いたします。
国民の身体と生命・財産を守ることに与党も野党もありません。テロ等準備罪の一刻も早い成立に向けて十分な審議を重ね、立法府としての責任を果たそうではありませんか。ご清聴ありがとうございました。
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